設計部の愛です。
今回は『和風庭園の計画』についてのお話です。
日本の住宅の庭園は、かつては鑑賞するための空間である事が主流でした。縁側があり、そこで日向ぼっこをしたり、お茶を飲みながらゆっくり庭を眺めたり、畑でとった野菜の下処理をしたり・・。近年ではそれが段々と変化し、テラスやウッドデッキを設け、そこで食事やお茶を飲んだり家族の団らんを楽しむスペースへと変わって来ました。洋風の庭の場合、テラスやウッドデッキは洋室と庭をつなぐ役割もあります。
一方、和の庭には、和室と庭をつなぐ ”沓脱石” や、庭を歩き、つなげる ”飛石” や ”延段”があります。今回は、そんな和の施設を詳しくみていきたいと思います。
沓脱(くつぬぎ)石
和風の建物で縁側や和室から庭へ降りるときの一番目の石を指すことから、一番石とも呼ばれます。図のように、建物1階の床の高さは600mmほどあることが多く、庭へ降りる時は一番石から二番石、三番石と降りることになります。通常、建具を開けて庭へおりやすい位置に据えます。高さは1階の床高から360mm以下が目安です。
図)沓脱ぎ石周辺の高さ
雨落ち
通常、屋根の雨水は軒先の雨樋から縦樋を通り雨水桝へと排水されます。しかし数寄屋造りでは雨樋が軒先の美観を損ね、又雨樋に落ち葉が詰まる事を考慮して雨樋を付けない場合が多く、この様な場合に雨落ちが設けられます。雨落ちは軒から雨が落ちる位置に帯状に設けられる排水施設で、犬走り側や庭側からの表面排水を受ける役目も持っています。
犬走り
犬走りは以下のような効果を期待して設けます。雨水で建物の基礎が汚れないこと、建物の周囲を歩きやすいこと、水がたまらないこと、掃除がしやすいこと。砂利敷きとする場合、舗装された犬走りに比べると歩きやすさや掃除のしやすさ等は劣りますが、人が歩いた時にジャリジャリという音が鳴り、防犯に役立ちます。
飛石
飛石は、日本庭園の通路を伝い歩きするために表面お平らな石を一定の間隔をあけながら並べたものです。飛石は歩きやすさと景観の両方に気を配ることが求められます。飛石の打ち方には「千鳥掛け」「雁打ち」「二三連打ち」「四三連打ち」・・とたくさんの例があります。はじめの一石、目的地の一石、中間点等、要所要所に配置したあと、その間に統一感が出るように打ちます。
間隔は様々な考え方がありますが、間隔は10~20cm程度(中心間隔では40~50cm)が良いです。桂離宮の飛石の中心間隔の平均値は59.4cmです。歩きやすい寸法としては中心間隔で60cmまでに抑えます。飛石の高さは小さい石で地面から3cm程度、大きい石で6cm程度になるように据えていきます。
図)飛石の打ち方の種類
飛石を並べる時、石の自然な形の曲がり(合端)が平行になるように並べる
延段
延段は、細長い園路のことです。飛石よりも早く歩くのに適しています。延段の形には以下のものがあります。
・「真」切石を中心としてきちんと組む延段
・「行」切石に不規則な形の石を混ぜたものや玉石敷きの延段
・「草」玉石や不規則な石を使う延段
いずれも直線ですがその順に少しずつ柔らかなイメージになります。その素材も、今は輸入石材やレンガ、枕木、コンクリート平板等様々な素材が用いられています。
昔ながらの日本庭園には、先人たちの知恵や工夫が多く見られます。そこにどの様な理由があるのかきちんと知り、今後の新たな使い方を探すステップにしていきたいです。